大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 平成元年(ワ)4501号

原告

甲野太郎

右訴訟代理人弁護士

服部素明

三上孝孜

梅田章二

被告

朝日自動車株式会社

右代表者代表取締役

伊藤政信

右訴訟代理人弁護士

平山芳明

平山忠

主文

一  原告と被告との間に雇用契約が存在することを確認する。

二  被告は原告に対し、金七万四〇〇〇円及び昭和六三年一〇月から一か月金二五万七二五二円の割合による金員を毎月二八日限り支払え。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決は、第二、第三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

1  主文第一ないし第三項と同旨

2  仮執行宣言

第二事案の概要

一  争いのない主たる事実

1  原告は、昭和五四年一月三一日、タクシー業を営む被告と雇用契約を締結し、タクシー運転手として稼働してきた者であり、朝日自動車労働組合(以下、朝日労働組合という)の組合員である。被告はタクシー振興事業協同組合(以下、協同組合という)西大阪基地(以下、西基地という)に所属する従業員約五〇〇名の会社である。被告は従業員に対し、給与を前月二一日から当月二〇日までの分を当月二八日に支払っている。仮に後記本件解雇が無効であれば、被告は原告に対し、賃金として<1>同六三年九月二八日限り金七万四〇〇〇円、<2>同年一〇月から毎月二八日限り、金二五万七二五二円の支払義務がある。

2  被告は就業規則で左記のとおり規定している。

(一) 二三条 次の各号に該当するものは入場させないことがあり、退場させることがある。

(1) 一項 酒気を帯び他人に迷惑をかける虞れのあるもの

(2) 二項 風紀秩序を乱し、又は衛生上有害と認めるもの

(二) 六八条 次の各号に該当するときは三〇日前の予告或は三〇日分の平均賃金を支給して解雇する(以下、本件解雇事由という)。

(1) 三項 精神或は身体に故障があるか又は虚弱老衰若しくは疾病のため業務に堪えられないと認めたとき

(2) 七項 会社の従業員として適しないと認めたとき

3  被告は原告に対し、同六三年八月一一日、「放尿が数回有り、衛生上、社内秩序従業員として適しない」ので、就業規則二三条一項、二項、六八条三項、七項に基づき予告解雇する旨の意思表示(以下、本件解雇という)をした。

4  被告の勤務時間は、原告の場合は規則上毎朝八時に出勤し、翌朝午前一時四五分までとなっていた。しかし、原告ら乗務員の実際の帰社は午前二時半頃が平均的であり、その後、車両の手入等を行う必要があったので、仕事が終わるのがほぼ午前三時頃であった。

5  原告の申立により、組合と被告が解雇の撤回につき交渉を行った。

6  被告は原告の就労を拒否し、雇用契約上の地位を争っている。

二  主たる争点

1  就業規則六八条三項、七項所定の解雇事由があるか否か。

被告は、原告には後記2「被告の主張」(1)摘示のような放尿に関する事実があったので、右所定の解雇事由がある旨を主張し、原告はこれを争っている。

2  解雇権の濫用について

【原告】

左記の解雇に至る経過等に照らすと、本件解雇は権利の濫用に当たり無効である。

(1) 原告は、被告に就職後、運転手として真面目に勤務してきた。

(2) 原告は昭和六二年九月頃、業務中に事故に遭遇し、神経系統に若干変調を生じたらしく、放尿があったようであるが、飲酒した上での無意識のものであり、反省もしている。

(3) 原告ら運転手は帰社後、就寝前にビール等を飲んでいるが、これは疲れを癒すためであり、被告も売店等を設置し、飲酒することを容認している。

(4) 原告は、同五八年六月から同一一月までの間に無断欠勤があり、未収金の発生につき注意を受けたこともあるが、本件解雇とは時期的に離れているし、その後は無断欠勤・遅刻はなく、表彰を受けたこともある。

(5) 所定勤務時間内の収益としては原告の売上が特に低額とはいえず、被告から営業成績のことで注意を受けたこともない。なお、被告主張の後記未収金は、給料支払時に精算され、乗務員である原告の負担となるので、被告の損害には一切ならないし、毎日原告以外の乗務員についても相当多数の未収金が生じているから、被告も原告の解雇理由にしていないものである。

(6) 原告は、ロッカーを故意に破損したり、ロッカーを三個も使用したことはないし(二個を使用)、被告からその返還を求められるや一個を返還している。

(7) 被告は、同六三年八月の放尿事件につき十分な調査をせず、事件発生から四日後の同月一一日に本件解雇を社内決定している。

(8) 仮眠室では、他にも寝小便、放尿の前例があり、行為者が判明している場合でも、解雇処分をした例はない。

(9) 被告は原告に対し、注意処分等を一度もせずに解雇の意思表示をしたものである。原告の申立に基づき組合も解雇の意思表示の撤回を求めたが被告は全く取り合わない。

【被告】

左記の事由に照らすと、本件解雇は権利の濫用に当たらない。

(1) 昭和六三年二月一二日から同月二二日にかけて連続して四回の放尿事件があり、西基地の保守課、清掃担当員から抗議があった。そこで、被告は同月一五日から同月一七日までの三回にわたり、点呼時に寝小便、放尿の病気のある者は被告まで申し出るように注意し、入庫後の飲酒は中止するように要請した。その後、同年三月頃と同年八月五日頃に放尿事件があり、平成元年八月に到り、原告の放尿であることが判明した。右二回の放尿は約一八リットル缶(煙草の吸殻入)にしているから、意識的な放尿である。また、同年八月七日、原告は仮眠室北側の西から二番目ベッドに寝ていた同僚の沖原勲の左腰部分に放尿し、同人から注意を受けるやベッド脇の右同様の缶に放尿をした。そこで、被告は原告に対し同月一一日、事情聴取をしたところ、原告はこれを否認し、反省の態度を見せなかった。右の放尿行為は他の従業員に嫌悪感を与えるのみならず、不衛生であり、また被告は西基地事務所から注意を受けて社会的信用を失墜させられており、掃除やクリーニング等に余分な労力と経費を支出させられている。原告の右放尿行為は集団生活を維持できず、社内秩序の維持も到底不可能である。

(2) 原告は、同五八年六月以降、同年一一月までの間に無断欠勤を一一回(二二日)したことや、未収金の発生につき、被告から注意を受け、誓約書を提出させられている。

(3) 原告の同六三年一月以降同年七月までの営業成績は、全従業員平均の売上額よりも著しく低額であり、公休日出勤の売上額を加えても会社経営上必要な最低の売上額にも達していない。被告は従前から営業成績の低いことを注意してきたが、原告には反省の情が見られない。

(4) 被告は従業員用のロッカーを設置し、各自一個(原告は七六番)の使用を認めている。ところが、原告は七九番のロッカーの鍵を損壊して使用していたにもかかわらず、損壊の事実を否認し反省の情がなかった。

3  中間収入の控除

被告は、原告は、平成元年一月頃から株式会社テクノサービスに勤務し、少なくとも毎月金二五万七二五二円以上の収入を得ているものと思料されるから、中間収入を控除すれば、平成元年二月一日以降の原告の本件賃金の請求は失当である旨を主張し、原告は、アルバイト程度の仕事に従事しているに留まり、原告の主張するような収入はないとしてこれを争っている。

第三主たる争点に対する判断

一  放尿行為、本件解雇に到るまでの事実経過等

1  争いのない事実、証拠(<略>)、弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。

(1) 被告は西基地に所属する従業員約五〇〇名の会社であり、原告は被告の従業員としてタクシーの運転業務に従事していた。協同組合は、西基地所属会社の従業員のために食堂を設置し、午前一時から午前五時まで酒類等の販売を行うと共に仮眠室を設置し、その清掃・保守等を行っている。

(2) 被告は、仮眠室に四八台の二段ベッド(九六名用)を確保し、原告ら従業員に使用させていた。しかし、被告は、原告らに仮眠室での宿泊を義務づける業務上の必要性はなく、宿泊施設の利用を従業員の自由に委ねていた。同仮眠室には防災等のために水入のオイル缶(約一八リットル、以下、缶という)を置いていた。

(3) 被告の仮眠室では、従来から布団に放尿した形跡があり、西基地保守課から苦情が寄せられ、その都度、被告は同保守課、清掃担当員に陳謝していたが、同六二年七月上旬にも二回の放尿事件があった。そこで、被告は原告ら従業員に対し、朝礼(同月一三日ないし一五日)において、放尿等を行う者を現認した場合には注意すると共に病気で放尿癖がある者は申し出ることを指示した。その後、同六三年二月上旬にも四回の放尿事件があり、右保守課から厳しい苦情の申し入れがあった。そこで、被告は再び原告ら従業員に対し、朝礼(同月一五日ないし一七日)において前記同様の注意を促したものの、従業員からの申立はなかった。右経過の中で、被告は、就業後の西基地内の食堂における飲酒が放尿の主たる原因であると判断しつつも、仮眠室宿泊者の禁酒措置等をとらなかった。

(4) 右経過の中で、原告は、同年三月の中旬の午前六時頃(缶、前田修目撃)と同六三年八月五日午前五時三〇分頃(缶、角田要目撃)、同月六日午前五時四〇分頃(沖原勲の腰付近と缶)、それぞれ無意識で放尿し、後二者については同僚から起床後に注意を受け、殊に被害者の沖原に対しては右行為を陳謝した。そして、同月七日、沖原から右報告を受けた被告側は、従前からの仮眠室における放尿者を原告と判断し、同月一一日、上林尚司常務取締役(以下、上林常務という)と八幡光一部長代理(以下、八幡部長代理という)が原告から後二者の放尿を中心に事情聴取を行った。これに対し、原告は、当初は記憶がないと否定したものの、同僚の目撃もあるので「自己が放尿したと思う」旨を述べて陳謝した。しかして、原告は今後仮眠室で就寝しない旨を申し出たところ、上林常務から同申立を断られたけれども、<1>同年同月七日の沖原に対する放尿は自分かもしれないこと、<2>今後は入庫後にアルコール類を飲んで仮眠室で就寝しないこと、<3>寛大な処置をして欲しい旨を記載した報告書を提出した。

(5) ところが、被告は、原告以外の者が布団等に放尿したこともあったにもかかわらず、過去の全ての仮眠室内の放尿者を原告であると決めつけ(乙第一三号証参照。ちなみに原告が前記三件以外の放尿をしたことを認めるに足りる証拠はない)、かつ当該放尿は故意に基づくもの(<証拠略>)と判断したうえ、原告に対し、右同日、本件解雇通告をなし、予告解雇手当を同月末日までに原告名義の銀行口座に振り込んだ(原告は同金員を解雇後の未払賃金の一部として受領したが、前記争いのない未払賃金中に含まれないものである)。

(6) 他方、朝日組合は、同年八月二〇日以降の団交で、原告も反省しているとして解雇の撤回を求めたが、同六三年九月二四日付で原告に対し、被告が本件解雇を行ったので一応これを尊重し、原告と被告間の本件訴訟の結果を見守りたいとの通告をした。

なお、被告は、原告の三回にわたる放尿行為は意識的なものであり悪質である旨を主張する。しかしながら、原告が同僚の沖原に対し故意に放尿することは格別の事情のない限りありえないところ、本件資料の下では同事情を認めることはできない。また、原告は、よろけながらバケツに放尿し、角田から注意を受けても寝ぼけた様子で放尿を続け、起床後も『そんなこと知らん。しかし、そういえば寝た場所と起きた場所が違っていたなあ』と述べる始末であり(<証拠略>)、本件解雇の直後に原告は自宅の居室内においてさえも無意識で放尿したことがあるというのである(原告)。そうすると、原告の前記三回の放尿行為を意識的なものであったと認めることは困難である(ちなみに沖原に対する放尿に続く缶への放尿が仮に意識的なものであるとしても、無意識で開始した放尿を中断することは生理的に著しく困難であるから、当該放尿を必ずしも悪質なものということはできない)。また、被告は、原告の仮眠室内での放尿により被告の社会的信用が失墜した旨を主張するが、本件全証拠によっても被告の社会的信用までを失墜したとは認め難い。

2  証拠(<略>)、弁論の全趣旨によれば、被告は、西基地に従業員用のロッカー(各自一個)を設置し、原告には七六番のロッカーの使用を認めていたこと、原告は右ロッカー以外に同六三年四月頃から七九番のロッカー(自殺した元従業員のロッカーで既に鍵は破損した状態で放置されていた)を被告に無断で使用していたこと、その後、被告は同年五月上旬に同ロッカーの鍵を修理したこと、原告は右修理に気づかず、扉が開きにくかったのを錆びつき或は故障と判断し、同ロッカーのノブを強く引いたところ、同鍵は破損したこと(同ロッカーは相当に古いものであり、修理も素手で引いた程度で破損するような不十分なものであった)、被告では鍵の破壊された状態のロッカーが他にも相当数存在するが、これらは利用者が鍵を忘れた場合に当該合鍵を使用しようとしても、被告の管理が杜撰なために合鍵を容易に使用できないことから、ドライバー等で故意に鍵を破壊することによって生じる場合もあること、従来被告はロッカーの鍵の右破損行為を知っても特に調査・原因究明等をせず、原告以外の従業員に対し、注意や処分等をしてこなかったこと、原告は被告側からロッカーの複数使用について注意を受けるや、七九番のロッカーの使用を中止していること、被告は原告が同年五月に七九番のロッカーの鍵を壊したことを知りながら、本件解雇(同年八月)まで始末書(修業規則七五条)さえ提出させず、特に処分の対象として考慮していながったことが認められる。

3  証拠(<略>)、弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和五八年六月から一一月にかけて合計一一回(二二日)の無届欠勤があり、未収金(正規の売上金額からチケットによる売上額を控除した現金額が納金すべき金額に不足すること)が生じていたことから、被告は、約一年経過後の同五九年一二月八日に至り、原告に対し、「今後、未収、無断欠勤のないように注意し、同様の違反をした場合にはいかなる処分にも従う」旨の誓約書を提出させたこと、他方、原告には同五九年以降解雇の意思表示を受けた同六三年八月までの間に無届欠勤はなく、却って同六〇年度には無遅刻・無欠勤で表彰を受けていること、未収金の生じる原因として客らに対する釣銭間違い等種々の原因が考えられるところ、現在でも相当多数の乗務員が未収金を生じさせているが、被告は支給明細書(給与)に本人未収の控除項目を定めて当該金額を給与から控除しているので、未収金による損害は存しないこと(証拠上把握可能な範囲で原告の支給明細書から本件解雇直前の未収金を調べてみると、同六三年五月から同年八月までの間に一〇円の未収金があったにすぎず、少なくとも同六三年度は原告の未収金は殆どなかったと推認される)、原告は本件解雇までに右誓約書の提出以外に処分等を受けていないこと等が認められる。

4  証拠(<略>)、弁論の全趣旨によれば、原告の営業成績は、従業員の月平均(同六三年度)よりも相当程度低いが、原告よりも営業成績の悪い従業員もかなり存在するものと推認できること(ちなみに、証拠上可能な範囲で営業成績をみると、原告の売上は従業員一八〇名余のうち、同六二年七月一三日は上位四〇位以内、同月一五日はほぼ中位であり、同六三年二月一七日は原告よりも営業成績の低い者が三〇名余存在する)、しかし、被告では営業成績が悪いことを理由に従来解雇した例はないし、本件解雇もこれを理由とするものではないことが認められる。

二  本件解雇事由該当性、解雇権の濫用、雇用契約上の地位の確認について

被告は原告に対し、原告の「仮眠室での放尿行為」が就業規則六八条三項(精神或いは身体に故障があるか又は虚弱老衰若しくは疾病のため業務に堪えられないと認められるとき)、七項(会社の従業員として適さないと認めたとき)に該当するとして解雇の意思表示をしている。そこで、本件解雇事由の有無、解雇権の濫用等につき検討する。

1  就業規則六八条三項について

本件解雇の経過は一1記載のとおりであり、仮眠室での放尿行為が乗車勤務に支障を及ぼすことは特段の事情のない限り考え難いところ、右事情を認めるに足りる証拠はないから、原告が「業務に堪えられない」と認めることはできない。よって、右規則六八条三項を理由とする解雇は無効である。

2  同規則七項該当性、解雇権の濫用について

争いのない事実、右一1ないし4認定の事実によれば、原告は被告が従業員のために用意した仮眠室で少なくとも三回放尿し、同寮(ママ)等に迷惑をかけたのであるから、被告が原告を「従業員として適さない」と認め、本件解雇をしたことには一応の理由が窺われ、しかも原告は被告のロッカーの鍵を破損したうえ、相当回数の無断欠勤・未収金があり、営業収入も平均より低いこと等が認められるけれども、他方、原告は本件解雇まで大過なく九年余りにわたり被告タクシー運転手として稼働してきた者であること、原告の右放尿行為は意識的な放尿とは認め難いうえ、西基地内の行為ではあるが就業時間外の行為であり、これにより業務成績が低下した事実もないから、必ずしも悪質とまではいえないこと、仮眠室は従業員の便宜のために設置されたもので、業務上宿泊が義務づけられていないから、被告が原告の仮眠室の使用を禁止すれば、原告の放尿問題を容易に解決できること(就業規則二三条は、酒気を帯び他人に迷惑をかける虞のあるもの〔一項〕、風紀秩序を乱し、又は衛生上有害と認めるもの〔二項〕を入場させないことがあり、退場させることがある旨を規定しているのであるから、原告の放尿が改善されるまでの間、右規定により仮眠室への入場を制限することによっても十分に対処できた)、原告は最終的に自己の放尿の事実を認め、沖原、被告に陳謝し、事情聴取の際には仮眠室を使用しない旨を申し入れたが、被告は右処置を講じることなく直ちに本件解雇に及んでいること、原告の無断欠勤は昭和五八年当時のものにすぎないし、未収金による被告の損害はなく、少なくとも本件解雇直前の数か月間は原告の未収金は殆どなかったこと、原告よりも営業成績の低い者が相当数存在するが、被告は従来、営業成績を理由に解雇した例はないこと、原告が七九番のロッカーも使用するに至った経緯(自殺者のロッカーで不使用放置)、同鍵の損壊の経過(修理の事実を不知、故障等と判断)、態様(素手で牽引)等は必ずしも悪質とはいえないのに対し、被告では従業員がロッカーの鍵をドライバー等で故意に損壊する悪質な事例さえあるが、従来被告は調査・処分をしていないこと等が認められ、これらの事情を総合勘案すれば、本件解雇は客観的合理性を欠いており、社会的に相当なものとして是認することはできないから、権利の濫用として無効であるといわねばならない。

3  被告が原告を解雇したとして就労を拒否し、その雇用契約上の地位を争っていることは当事者間に争いがない。

4  よって、本件雇用契約上の地位の確認請求は理由がある。

二  未払賃金及び中間収入の控除について

1  原告の給与は月額二五万七二五二円であり、被告は前月二一日から当月二〇日までの分を当月二八日に支払っていること、被告は原告に対し、昭和六三年九月二八日限り金七万四〇〇〇円、同年一〇月から毎月二八日限り金二五万七二五二円の支払義務があることは当事者間に争いがない。

2  被告は、原告には中間収入として少なくとも一か月二五万七二五二円以上の収入があるから、これを右未払賃金から控除すべき旨を主張し、証拠(原告)によれば、原告は平成元年一月終わり頃から株式会社テクノサービス(運送会社)に勤務し、賃金を得ており、中間収入があったことは認められるけれども、更に進んで具体的金額を認めるに足りる証拠は全くないから、法的に中間収入の控除可能な範囲を論じるまでもなく、右主張は失当である。

三  よって、本訴請求は理由がある(なお、確認請求に関する部分については性質上仮執行宣言を付するのは相当ではない)。

(裁判官 市村弘)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!